その昔「80日間世界一周」という小説がありました。80日間のクルーズと聞くとその言葉を思い出します。
今や船の分譲もあり「船に住んでいる」人もいるほど、世界中には客船のファンも多く、長い航海の客船もありますが、1航海で80日というのは、おそらくもっとも長い航海に入ります。
オランダ船「アムステルダム」が2017年10月15日に横浜港に入港し、見学してきましたので、レポート致します!年に一度の入港だというのに、あいにくの雨でした。。。
つくづく天候に関しては運を「持ってない」筆者です。
「アムステルダム」の概要は?

オランダ船「アムステルダム」。ネイビーブルーの船体がカッコイイです!
アムステルダムは2,000年就航(2015年改装)総トン数62,735トン、乗客数1,380名。内側の客室は少ないですが、広さは17㎡。窓側、ベランダ付きの客室にはすべてバスタブがついています。これはお風呂好きの日本人には嬉しいですね。
62,000トン超ということは、外国船にすれば、中くらいの大きさです。今日では、22万トンのロイヤル・カリビアン社の「ハーモニー・オブ・ザ・シーズ」を筆頭に、年々その総トン数が巨大化しています。もう少し経つと22万トンクラスの船が当たり前になるかも知れません。
「ホランドアメリカライン」とは?

白とネイビーの船体が素敵です!
ホランドアメリカラインはアメリカシアトルに本拠地を置いており、1873年に設立した会社です。もともとはアメリカとヨーロッパを結ぶ海運会社で、飛行機がポピュラーになり始めた頃、クルーズ会社に転向しました。
現在では、15隻のプレミアムクラスの客船を運航しており、シニア層やクルーズの旅にも慣れている人に人気があります。客船はアムステルダムをはじめ、コーニングスダム、フォーレンダムなどとオランダを思わせるネーミングがついています。
中型客船を多く所有し、長い航海が多い船としても有名です。
船内には博物館レベルの絵画や彫刻、骨董品などが展示され、ゲストの目を楽しませてくれます。また、生花を飾り、デッキはチーク材を使うなど、古き良きノスタルジックなクルーズ旅行の雰囲気を楽しむことができます。
クルーズ船のカテゴリとしては高級とカジュアルの中間あたり。1泊料金は20,000円~30,000円なので、近年日本に寄港している外国船の中では高級な部類なのではないでしょうか?
高級船では、ディナーのレストランも違う場合もありますし、フォーマルナイトも8日のクルーズで2日は設定されています。しかし、高級とカジュアルの中間となると、フォーマルウエアを着たい人は着る、着ない人は着なくてもOK!なスタンスです。
「アムステルダム」の船内アメニティー

客船のスパでのシェアが広いElemis
「アムステルダム」の船内アメニティー、ソープやシャンプーなどはなんとElemis Aromapureを使っているようです。
このElemisというブランドは、客船のエステサロンではほとんど使っていると言ってもいい、シェアが広い英国のブランドで、ナチュラルな素材が特徴です。
実は筆者が体験した「ダイヤモンド・プリンセス」内のエステ「ロータス・スパ」でも使っており、そのあまりの香りの良さ、つけ心地の良さにお買上げしてしまったほどです。
実は船内で買うと「免税価格」が適用されるので、お得のようです。
そんなブランドのものがバス・アメニティーに使われているのは贅沢なのではないでしょうか?
また、タオル類は世界の高級ホテルでも使われているエジプト綿100%。リネンと羽毛布団のシグネチャーベッドと、プレミアムとカジュアルの中間にあって、プレミアム船並のファシリティーなのにも注目です。
「アムステルダム」のダイニングは?

横浜港に着岸まじかの「アムステルダム」
「アムステルダム」のダイニングは、クルーズ代金に入っているものと有料のものがあります。
クルーズ中同じ席を割り当てられ、コース料理などが頂ける「ザ・ダイニング・ルーム」から、自由な時間にビュッフェ形式で食べることが出来る「リド・マーケット」、本格的なハンバーガーやピザなどの店があります。
また、無料のレストランだけでも豪華なのですが、さらに2000円~4000円ほど追加すると有料のレストランも使えます。
例えば、アラスカのキングサーモンやワシントンのステーキなどが食べられる「ピナクル・グリル」、イタリア料理の「カナレット」、アジア料理の「タマリンド」、地中海シーフードが楽しめる「ソル・ド・メール」などです。
外国船でありながら、日本を始めとしたアジアの料理が食べられるのはちょっとレアです。
また、内装もシブい、オランダのコーヒーやスナックを楽しめる「グランド・ダッチ・カフェ」、北欧家具のYチェアー風椅子が特徴で、カッコいい、スタジオ風のキッチンでクッキングクラスも開催している「クリナリー・アート・センター」など、魅力的なレストランが揃っています。
「アムステルダム」のエンターテイメントは?

日本の旅行会社の「アムステルダム」紹介には、エンターテイメント関係のことがあまり書かれていないので気になりましたが、ホーランドアメリカのHPによると、ピアノ・ショーの「リンカーン・ステージ」、ブルースの「BBキングス・ブルース・クラブ」、50年間のヒットソングを演奏する「ビルボード・オンボード」など音楽関係のエンターテイメントが多いように感じます。
また、「BBCアース・エクスペリエンス」と提携したエンターテイメントの「メインステージ・ショーラウンジ」、2層吹き抜け、270度の円形LEDクリーンを備えた「ワールド・ステージ」では、「革新的なエンターテイメント」が行われるようなので、是非、見てみたいところですね。
「アムステルダム」の航行ルートは?

テンダーボートもスタイリッシュ!
客船「アムステルダム」は、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、そして世界一周と、実に世界のいろいろなところを航行しています。
その中でも根強い人気なのが、ヨーロッパ、アラスカ、カリブ海、パナマ運河です。
1980年代にアラスカの旅行会社「ウエスト・ツアーズ」を買収。専用の氷河列車やバスやホテルの手配も得意です。そのため、アラスカクルーズとタイアップして、オリジナルなオプショナルツアー作りが好評です。
また、カリブ海では、「ハーフムーン・ケイ」というプライベート・アイランドを所有しています。ディズニークルーズ、ロイヤル・カリビアンクルーズなど、多くの客船会社もカリブ海にプライベートアイランドを持っているところは多いですが、プライベート・アイランドに上陸できるのは、その客船のゲストのみなので、このプライベートアイランドのために、「アムステルダム」に乗船するという人も少なくないようです。
「アジア・太平洋80日間クルーズ」とは?

グランド・アジア・パシフィック・ツアーの途中の横浜寄港です。
今回のクルーズは、「アムステルダム」の航行会社「ホランドアメリカライン」が毎年秋に行っている80日間の大クルーズ。普段は日本に寄港しませんが、年にたった一度、「アジア・パシフィック・クルーズ」の時だけ寄港してくれるのです。
日本にも寄港するそのルートは、アメリカ・ロサンゼルスを9月の末頃に出発、アラスカを経て、太平洋を横断、カムチャッカ半島、北海道の釧路、横浜、清水、神戸と寄港し、関門海峡を通過、九州福岡、中国・天津に寄港した後、上海、沖縄・那覇、石垣島、台湾、香港、ベトナム(ナチャン、フエ)、シンガポール、インドネシア(ボロブドゥール、バリ島、コモド島)、オーストラリア(ダーウィン、シドニー)、ニューカレドニア、バヌアツ、フィジー、サモア、アメリカ領サモア、ハワイ(ホノルル、マウイ)、その後、ロサンゼルスに帰港します。(2018年募集中のルートによる)
毎年日程や寄港地は微妙に変わる可能性がありますが、すごい大航海ですね。
料金目安としては13,000ドル(約170万円)。1日当たりの料金は安い部屋カテゴリだと20,700円ほどとなりますので、船のグレードからすると、それほどバカ高い金額でもないのではないでしょうか?
なお、2018年1月末までに予約をすると、3%の割引があったり、300-1,500ドル分のオンボード・クレジット(船の中で使えるクレジット)がもらえたり、と早期予約は何かとお得です。
朝8時の入港シーンをキャッチ!
横浜市港湾局のHPによると、入港時間は朝8時となっていました。しかし、7時20分頃にはすでにベイブリッジを通過し、横浜の大さん橋に向かってやってくる途中でした。
8月以来、筆者にとっては久々の大さん橋でしたが、この日はなんと非情の雨。それにもかかわらず、大さん橋の一段高くなった「撮影スポット」にはすでに5人ほどのすごいカメラを構えた男性陣がスタンバイしておられました。
到着時の楽しみであるコーヒー1杯もそこそこにカメラを準備します。この日はあいにくの雨。夢中で写真を撮っているとあっという間に大さん橋の着岸ポイントまでやってきた最高速度21.9ノットのアムステルダム。

ベイブリッジ方向からやってくる「アムステルダム」
かつて、同じ「ホランドアメリカライン」のVolendam(フォーレンダム)を見学したことがあるのですが、船の雰囲気は似ています。
ネイビーブルーの船体下半分、そして古き良き船旅を彷彿とさせる、スタイリッシュな外観がカッコイイです。

船体のフロント部分には「80days Asia-Pacific Tour」の文字が!「ホランドアメリカライン」の「アムステルダム」にとっても年に一度の大クルーズで、一大イベントなのがよくわかります。
他の客船、例えば「ダイヤモンド・プリンセス」などでも、10月には日本の各港と沖縄、台湾、香港、ベトナムをクルーズする「大航海」を実施しますが、秋にこのような長いクルーズを実施する客船は多いようです。
温かい地方はともかく、冬になると北方の海は荒れるので10月末で外国船は日本にはあまり寄港しなくなります。その年の外国船のクルーズシーズンの終わりを告げるサインで少し寂しいですね。
ノリの良いゲストたち

乗客のみなさん、ノリがいい!
「ホランドアメリカライン」は、もともとはオランダのロッテルダムで設立された会社。1873年にアメリカとヨーロッパを結ぶ海運会社として設立し、その後クルーズ会社に転身しましたが、「○○ダム」というネーミングを客船につけていることから、オランダの伝統と歴史に誇りを持っています。
ゲストは皆、ロサンゼルスから約2週間以上かけて横浜にやってきました。アメリカ、カナダ方面のゲストが多いらしく、ノリがよいので、盛んに客室やデッキから手を振ってくれます。筆者が「ダイヤモンド・プリンセス」に乗った時も、港で手を振ってくれると嬉しかったので、すかさず振り返しました。
インドネシア系キャビンスチュワードさんたち

山下公園から「アムステルダム」を臨みます。うーん、カッコイイ船体。
インドネシアはかつて、オランダの植民地でした。そのため、「アムステルダム」のキャビンスチュワードさんたちも、インドネシア系の方々が多いそうです。
インドネシア系の方たちはとにかく明るくて面白い人が多いというのが特徴です。
筆者も「ダイヤモンド・プリンセス」で一人、インドネシアはバリ島出身のクルーと出会い、バリ島の話をしました。祖国から遠く離れて仕事をしているので、バリ島の話をするととてもうれしそうだったのが、印象的でした。
バリ島の方たちは、日本語を喋ることができる人が多いのも特徴の一つです。
おわりに
いかがだったでしょうか?
普段は日本に寄港しておらず、アメリカやアラスカ、カリブ海、ヨーロッパなどを航行している「アムステルダム」ですが、年に一度の「アジア・パシフィック・グランドクルーズ」で横浜に寄港しました。年に一度会える、まさに「七夕」のような船です。
2000年に就航ながら、2015年には改装を終えており、外装のみならず内装もスタイリッシュになりました。
グルメやエンターテイメント、そしてサービスにおいても、カジュアルとプレミアムの中間の船でありながらとても質が高いと評判なので要チェックです。